[ オピニオン ]
(2016/5/10 05:00)
伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に先だって北九州市で開いた先進7カ国(G7)エネルギー相会合は、エネルギー分野のサイバーセキュリティー対策の国際協力を採択した。ITの進展によりテロなどのサイバー攻撃の脅威が増大するにあって、各国の連携が実効ある対策になることを期待する。
エネルギー相会合の共同声明には、各国のコンピューター緊急時対応チームを含む専門家間が地域や分野を超えて連携し、サイバー攻撃の情報や対策技術を共有することを盛り込んだ。またエネルギー安全保障政策の観点から、各国の保有技術を調査することにしている。
電力やガス、石油などのエネルギーインフラへのサイバー攻撃は、経済のみならず国民生活全体に甚大な被害をもたらす。特定の政府機関や企業を狙った攻撃で個人情報が漏洩(ろうえい)したり、制御系システムを不正操作して物理的被害を引き起こしたりする恐れもある。
米国では2003年、コンピューターウイルスに感染した発電所の制御システムが約5時間停止。ドイツでは14年に標的型メール攻撃によって製鉄所の溶鉱炉が損傷を受けた。
また実際に大規模停電に至った事例もある。15年12月、ウクライナ西部数万世帯で3―6時間の大規模停電が発生した。マルウェア付きメールによる標的型攻撃に端を発し、州内電力会社の変電所30カ所のブレーカーが遮断されたことが原因とみられている。
こうした危機を懸念して、米国の北米電力信頼性評議会が大規模発電施設などを対象に「サイバーセキュリティー対策基準」を策定。電力会社への監査制度を設けた。わが国でも制御系システムやスマートメーター(通信機能付き電力量計)に関する安全指針を策定するなど、対策を急いでいる。
各国とも重要インフラのサイバーセキュリティー対策は緒に就いたばかりだ。巧妙化する悪質な攻撃に耐える強靱(きょうじん)なシステムづくりのためには、G7各国の専門知識を結集することが望ましい。
(2016/5/10 05:00)