[ オピニオン ]
(2016/5/27 05:00)
製造業やインフラの監視などで、IoT(モノのインターネット)が急速に普及している。ただ生き物を扱う農業はITではなく、勘と経験がモノをいう世界だと思っていたら、この世界にもIoTが使われ始め、成果を上げつつある。
TKF(茨城県つくば市、木村誠社長)は同市などの農場で根菜類を生産している。中心はコマツナなどのベビーリーフである。ベビーリーフとはサラダなどに使われる野菜の新葉(幼葉)のこと。栄養価が高く、近年、売れ行きを伸ばしている。
ただ双葉から一番葉、二番葉が出たあたりで収穫しないとならず、収穫後は長く保存することが難しい。そのため需要を上回って栽培すると廃棄しなければならない。逆に供給が需要を下回れば欠品となるという課題が付きまとっていた。
この課題解決を目指し、同社と東京理科大学理工学部の日比野浩典准教授、富士通エフサス、農業コンサルタントのアグロポリス(大分県臼杵市、水上洋介代表社員)などが共同でIoTによる作物の生育と収穫について高精度に評価するモデルを開発。種まきから収穫までのプロセスを模擬実験するシステムを作成した。
ベビーリーフを”モノ“ととらえ、種まきから収穫までの成長プロセスをカメラやセンサーで測定、温度や湿度、土壌などの環境データと合わせて蓄積した。正確を期すために葉の大きさなどは人が測定したそうだ。
データを分析すると、ベビーリーフの成長はおおむね一定の曲線状になることが分かった。当然ながらばらつきがあるものの、これも日比野准教授らが解析し、モデルにすることで精度を高めた。現在は種まきの前に収穫量をほぼ正確に予測できるようになった。需要に大きな変動がなければ、ロスや欠品を少なくすることができるという。
IoTがさまざまな分野に活用できることを示した興味深い成果と言えそうだ。IoTを上手に使って無駄をなくし、よいモノを安く供給し、私たちの生活をより快適にすることを期待したい。
(2016/5/27 05:00)