[ オピニオン ]
(2016/6/2 05:00)
就任2期目となる経団連の榊原定征会長の新体制が2日、スタートする。政権と産業界を“車の両輪”にたとえ、引き続き政権との連携重視の姿勢で臨む構えだ。だが消費増税をめぐっては両者の意見対立も表面化した。最も活動が充実するとされる2期目、榊原経団連の真価が問われている。
榊原会長は、産業界のトップとして「日本の将来を見据えた国家戦略を提言する」との決意を新たにしたという。外部との軋轢(あつれき)を恐れず、先送りできない難題に切り込む覚悟を示してもらいたい。
安倍晋三首相は世界経済の危機回避を理由に、消費増税の再延期を押し切った。経済政策「アベノミクス」が目指す日本再興の道筋に迷いは生じていないか。今こそ産業界が、虚心坦懐(たんかい)に政権と対話すべきだ。
この2年間、榊原会長は安倍政権との関係修復に腐心し続けた。就任直後から会員企業に政治献金を呼びかけ、首相の外遊にも積極的に同行。政府の経済財政諮問会議の民間議員に起用されるなど首相との強いパイプを築いた。2015年1月に策定した『榊原ビジョン』は「アベノミクスの“新3本の矢”にさまざまな面で影響を与えている」と自賛する。
一方で経団連の組織運営の改革にも着手。政策を立案する委員会の大幅刷新や伝統を覆す役員人事など、時代の変化や合理性を反映した独自路線を進めたことは新機軸といえる。
ようやく産業界が求める政策の実現に手応えが出てきたものの、年明けから円高と新興国経済の減速で企業の収益環境は一変。首相は伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)後に「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限にふかす」と訴えた。
日本経済が分岐点に立っている局面だからこそ、経団連に求められる役割は大きい。民主導の経済成長には、労働規制をはじめとする規制改革や、原子力発電所の再稼働によるエネルギーの安定供給など、企業活動を後押しする政策の実現が欠かせない。榊原経団連の“突破力”に期待する。
(2016/6/2 05:00)