[ オピニオン ]
(2016/9/29 05:00)
恒例の全国労働衛生週間は10月1日から7日まで。法改正により、多くの企業が従業員のストレスチェックや化学物質のリスクアセスメントに取り組む必要がある。事故や自然災害以外の「職場の健康」を、改めて見直したい。
改正労働安全衛生法では、2015年12月にストレスチェック制度の導入、16年6月に有害な化学物質のリスク調査を事業者に義務づけた。ただ中小企業を中心に、認知度は必ずしも高くないのが実情だ。
ストレスチェックは従業員の心理的な負担の程度を把握するもの。いわば“こころの健康診断”だ。厚生労働省は簡易な検査方法として57項目を定めており、アンケートのような方法で調べる。ただ実施者は原則として産業医か保健師、または所定の研修を受けた看護師などに限られる。多くの企業は、こうした資格を持つ専門業者に外注することになろう。
検査は年1回で、初年度は12月までに実施しなければならない。従業員50人未満の企業は当面、努力義務にとどまる。
注意すべきは健康診断と違い、従業員が検査を辞退できることだ。また検査結果は産業医などが直接、本人に通知し、事業者が内容を把握することは禁じられる。メンタルヘルスの状態は個人のプライバシーにも深く関わるため、こうした扱いとなった。
化学物質のリスクアセスメントは、有害性が認められている化学物質を扱う場合、危険性を事前に企業が把握し、従業員に知らせるもの。規模に関係なく義務化されたが、現状ではリスクの把握と告知が求められるだけで、対策義務はない。
いずれも職場の健康を守る上で従来から関心をもたれてきた分野だ。ただ化学物質管理がモノづくり産業主体なのに対し、ストレスチェックは全業種が対象という違いがある。
まずはそれぞれの企業の状況に応じて必要性を認識し、定着を図りたい。その上で、義務化を“仏作って魂入れず”に終わらせないよう、実効性を高める努力が必要だ。
(2016/9/29 05:00)