[ オピニオン ]
(2016/10/17 05:00)
環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案の国会審議が始まった。世界各国で“反グローバル化”の動きが台頭する中にあって、日本が両法案を早期に成立させ、世界貿易を拡大する契機にしてほしい。日本は少子化対策や構造改革を通じて内需を拡大する一方、成長するアジアの需要を取り込まなければ新たな成長軌道は描けない。中堅・中小企業による円滑な国際化を促す上でも、与野党に建設的な議論を期待する。
2008年のリーマン・ショック以降、世界規模で“閉鎖経済”への転換が進んでいる。各国が経済成長しても貿易量が増えないのだ。日欧や新興国が金融緩和による通貨安競走に走る一方、世界経済をけん引してきた中国が構造改革を迫られるなど、グローバル経済は修正局面を迎えている。
この間、国際政治・経済の先行き不透明感が為替や原油など金融・商品市況の不安定な動きを続けてきた。さらに英国による欧州連合(EU)離脱問題、米大統領選両候補の反TPP、再交渉要望など、世界の交易環境が改善される兆しはみられない。むしろ保守化・右傾化の進行が世界経済を収縮させるリスクが懸念される。
日米のTPPの国内手続きが遅れているだけでなく、米国とEUは環大西洋貿易投資協定(TTIP)、日中韓は東アジア包括的経済連携(RCEP)の年内合意を断念した。こうした世界の自由貿易交渉の停滞を長引かせてはならない。
日本には、世界の自由貿易を主導する役割を期待したい。TPP関連法案の早期成立により、米国に対してオバマ政権下でのTPP批准を促すべきだ。同時に、年内合意が困難視されている日欧の経済連携協定(EPA)交渉も前進させたい。EUは17年に英国とのEU離脱交渉や仏大統領選挙などを控えており、年内合意に傾く余地はあるだろう。
安倍晋三政権は米大統領選の11月8日までにTPP関連法案の衆院通過、今国会での早期成立を実現し、自由貿易交渉の流れを変えてもらいたい。
(2016/10/17 05:00)