[ オピニオン ]
(2017/8/31 05:00)
歴史的建造物を活用したまちづくりに力を入れる自治体が増えている。歴史的建造物に関心を持ち、保全のボランティアなどに参加する人も少なくない。さらに参加を促すための行政の取り組みに期待したい。
日本は木造建築物が多く、自然災害や第二次大戦の空襲もあり、海外に比べて都市部の歴史的建造物が少ない。ただ、国の重要文化財である東京・日本橋の真上を走る首都高速道路の地下化が検討されるなど、景観上からも歴史的建造物が注目されている。
ふるさと納税制度やクラウドファンディングを活用して理解を求め、保全活動への参加を促す自治体も増えている。かつて商都として栄えた北海道小樽市や、しょうゆ醸造発祥の地である和歌山県湯浅町などは、ふるさと納税の寄付金を歴史的建造物の保全に活用している。
また名古屋市は古民家を飲食店などに改修する際、クラウドファンディングによる資金調達の成立を前提に、基金を通じて建物の保全活用の工事費を助成している。
課題は市民の関心をいかに高めるかである。横浜市開港記念会館や赤レンガ倉庫、ホテルニューグランドなどの歴史的建造物を持つ横浜市は2016年度に、ふるさと納税の支援メニューに歴史的建造物の保全活用を加えた。
市民の寄付金をリノベーションの助成金や建物を紹介する看板の設置などに充てる。初年度は目標額500万円を超える約565万円が集まった。だが17年度はまだ目標額に届いていない。
横浜市は市民向けの歴史セミナーや広報誌を通じて歴史的建造物の広報・宣伝に力を入れている。関東大震災後に建造され、重厚でデザイン性に優れた「震災復興橋梁」を川から見学するクルーズ体験を含むセミナーも9月9日に行う。
こうした遊び要素の高いイベントは、市民の関心を高めることに有効だろう。歴史を分かりやすく伝える建造物は貴重な文化であり、活用方法にも知恵を絞ってもらいたい。
(2017/8/31 05:00)