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4月18日は「発明の日」/オープンイノベーションで日本の競争力は復活するのか

(2018/4/20 05:00)

業界展望台

弁護士/弁理士 鮫島正洋

最近頻繁に登場する「オープンイノベーション」という言葉。一体、何を意味するのか。オープンイノベーションは大企業と中小・ベンチャー企業の連携を意味する言葉であり、政府が重点を置く施策の一つとなっている。なぜ、オープンイノベーションが日本の競争力を復活させるカギとなるのか。オープンイノベーションは手段であって、目的ではないということを前提にしつつ、筆者の考えるところを論じていく。

オープンイノベーションとは何か

オープンイノベーションとは、もともとは自社開発技術にこだわらずに、他社の技術を積極的に採用すること。つまり、自前主義脱却という意味の言葉である。自前開発していたら20世紀に比べて格段に速くなったマーケットの動きに追従できないという背景下において、5年ほど前から使われるようになった行政用語でもある。

ところが、この数年、大企業と中小・ベンチャー企業との連携を意味する概念となった。大企業の風土ではなかなか生み出せないイノベーション。それならば、中小・ベンチャー企業のイノベーションを積極的に取り込んで、次のメシのタネにしようという動きから、大企業ではCVC(Corporate Venture Capital=新規投資部門)が全盛となった。

しかし、オープンイノベーションは単なる手段であって、目的ではない。

日本の競争力の源泉―何層にもわたるテクノロジーの蓄積

目的は、ずばり日本の競争力を増大させること。その駆動力となるもの、いわば競争力の源泉は何か。

筆者はテクノロジーの網羅的な集積にあると考えている。ライフサイエンスや人工知能(AI)のような個別の領域では、日本より先進的な国や地域は存在する。しかし、テクノロジーを(1)アカデミア(2)量産技術(3)匠の技―という3階層に分けた時に、ライフサイエンスから化学、材料、機械、電気、半導体、ソフトウエアまであらゆる領域において、テクノロジーを保有している国は日本だけである(図1)。

  • 日本と他国が保有する技術の領域

日本の競争力の源泉は単一競技(100メートル走、マラソン)ではなく総合性(10種競技)なのである。

そうだとすると、日本の競争力は日本の技術同士をつなげることにより、世界中に存在するあらゆる社会課題を解決するソリューションを提供できるという点に認められる。

そして、この競争力を発揮するために用いられるのが、オープンイノベーションという手段なのである。具体的には、世界中に存在する社会課題を特定して、日本発の技術のオープンイノベーションで解決していくこと、それをグローバル展開することが日本が採るべき政策となる。

大企業・VB連携「ウィンウィン」に

第一のカギとなる社会課題の特定とその解決は、ベンチャー企業が得意である。

ベンチャー企業はそもそも社会課題を解決するために実験的な規模からビジネスを開始する存在である。実際の現場では、投資家(ベンチャーキャピタル)がベンチャー企業に対して要望する緻密な事業計画の策定の発端となるのは、いつでも社会課題(マーケットニーズ)である。そして、ベンチャー企業がその社会課題を解決するソリューションを生み出すことを、ベンチャー用語でPOC(Proof of Concept=概念実証)と呼ぶことがある。

とはいえ、ベンチャー企業には体力も資金力もグローバル展開力もない。そこで、ベンチャー企業によるPOC済みのソリューションについて、第二のカギとなるグローバル展開を果たすためには、大企業の力が必要である。この際、ベンチャー企業が創り出したソリューションを大企業に移転するという態様で「オープンイノベーション」が発生する。大企業にとって、喉から手が出るほど欲しかった新規事業がPOC済みで入手でき、ベンチャー企業にとって果たせなかった夢であるグローバル展開が実現できる。つまり、お互いにウィンウィンのアライアンスを組めるわけである。

日本の技術、日本の企業同士の連携によって世界中の社会課題を解決するわけだから、これを宣伝してブランド化につなげない手はない。これが政府の役割である。かつて、クールジャパンというブランディングプロジェクトがあったが、イメージとしては、そのテクノロジー版的な位置づけであり、かつ、より直裁的に日本の競争力を世界中にアピールできる行政手法となりうる(図2)。

  • オープンイノベーションにおけるベンチャー企業・大企業・政府の連携

現状は発展途上

オープンイノベーション環境において、大企業とベンチャー企業の関係はウィンウィンであるから、両者は本来対等であるべきだ。しかし、いまだ中小・ベンチャー企業を下請と捉え、技術を搾取したり、傲慢(ごうまん)な交渉を仕掛けたりしてくる大企業が存在する。そのような大企業はいずれイノベーションを生み出す側のベンチャーコミュニティーから見放されて、競争力を失うことであろう。長期的視点によりベンチャーコミュニティーと良好な関係を築く大企業と、短期的視点により大企業であることの優越性を振りかざす大企業の、いずれが勝ち残るのか、壮大な社会実験が繰り広げられようとしている。これが@2018オープンイノベーションの現場である。

【略歴】さめじま・まさひろ 1985年東京工業大学金属工学科卒業。藤倉電線(現フジクラ)、日本IBM知的財産部。99年弁理士登録。2004年内田・鮫島法律事務所設立、現在に至る。12年知財功労賞受賞。「下町ロケット」に登場する神谷弁理士のモデル。

【業界展望台】発明の日特集は、5/1まで全9回連載予定です。ご期待ください。

(2018/4/20 05:00)

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