[ オピニオン ]
(2018/4/23 05:00)
九州や中・四国の交通インフラで大型計画が相次いで浮上している。本州と九州をつなぐ第3ルートや四国と九州を結ぶ新幹線構想だ。国土強靱(きょうじん)化構想の一環として古くから計画されているものの、政治や経済の浮沈でその都度棚上げされてきた。だが多発する自然災害を教訓に、リダンダンシー(災害時代替機能)の観点から見直しが進む。課題は費用対効果だが、地方創生のためにも実現が望まれる。
国土交通省は北九州市と山口県下関市を結ぶ「下関北九州道路」実現に向け、2018年度予算に2年連続2100万円の調査費用を盛り込む。周辺自治体は本州と九州をつなぐ三つ目の都市間連絡道路として産業、物流、観光と多面的効果に期待する。
本州と九州をつなぐ陸路は1958年開通の関門トンネルと、73年開通の関門橋のみ。いずれも老朽化が進み、相次ぐ補修工事は頻繁な渋滞を生み出している。さらに災害発生時には九州が孤立する恐れもあるため、代替ルート確保が望まれる。
また大分県も同様の理由から九州と四国を結ぶ海峡横断ルート(豊予海峡ルート)の必要性を訴える。中核は大阪―四国―大分を結ぶ新幹線だ。大分の佐賀関半島と愛媛県の佐田岬半島間約14キロメートルをつなぎ、現在フェリーで289分かかる大分―松山間を38分で結ぶ構想だ。わが国の国土4島の内、四国と九州は唯一陸路がつながっていない。災害時代替ルートとして、2島がつながる意義は大きい。
事業費は数千億円から1兆円を超える大型案件と試算されている。少子高齢化による人口減が加速度的に進むと見られている九州や中・四国で、これだけの大型投資が必要なのかという声があるのは事実。一方で、地方都市の疲弊が国全体の活力を失うことに異論はない。
リダンダンシーに加え、地方創生や外国人観光客誘致からも、地方のインフラ投資が不要と断じるのは時期尚早だ。費用対効果を十分見極め、国や地域全体で実現が望まれるよう世論の合意形成に努めてほしい。
(2018/4/23 05:00)