[ オピニオン ]
(2018/6/20 05:00)
約5万社が加盟する大阪と京都、神戸の関西3大商工会議所が、健康寿命を延ばす事業の創出に向け団結する。製薬や再生医療技術、介護ロボットの実証基盤などが集積する京阪神地域の強みを持ち寄り、日常に溶け込む事業を実現する狙いだ。少子高齢化を背景に政府の社会保障費は増え続け、財政健全化を阻害している。健康に過ごせる時間が延びれば、人生が豊かになるだけでなく社会保障費の削減にもつながる。団結の意義は大きい。
京阪神の3商工会議所は、「関西ウエルネス産業振興構想」をまとめて活動を始めた。大阪商工会議所によると、複数の商工会議所が、健康に関わる事業モデル構築に力を出し合うのは初めてという。大商の手代木功副会長(塩野義製薬社長)は、「イメージとゴールを共有するため、こうした構想から入ることが重要だった」と解説する。
大阪は国内外の大手・準大手医薬品メーカーが数多い。京都はiPS細胞(人工多能性幹細胞)に代表される、再生医療の最先端技術と頭脳が集まる。さらに神戸は、医療関連企業の研究開発拠点整備や、介護ロボットの実証などに積極的な地域。地の利は十分だ。
同構想は医薬やヘルスケア、スポーツ、食といった健康産業と縁の深い分野に着目し、事業モデルを立ち上げる。まず高齢者を中心に健康寿命延伸に関わりが深い、「運動機能」と「認知機能」を改善する事業を探る。おおむね3年後の2020年度に、1―2件を事業化する。
“人生100歳時代”を迎え、健康は国民の関心が高い。需要の裾野は広く、顧客層は厚い。構想が順調に進ちょくすれば関西に人、モノ、資金を呼び込む潤滑剤としても機能しそう。健康寿命を延ばせるサービスとブランドを築き、経済を潤している訪日外国人旅行者に“健康ツーリズム”といった新たな需要を掘り起こすことも可能だ。
大手や中堅中小企業の商機であるだけでなく、同構想に端を発したベンチャー企業の発掘、大手や中小とベンチャーを橋渡しする役割も期待したい。
(2018/6/20 05:00)