[ オピニオン ]
(2018/7/3 05:00)
2018年3月期決算発表で最高益をはじめ高水準の企業収益が相次いだが、企業の景況感はさらに悪化していることが明らかになった。好業績と冷え込む企業マインドという矛盾する動きは世界経済の先行き不透明感に起因しているようだ。
日銀が2日に発表した6月調査の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、代表的な指標である大企業製造業の業況判断DIは、前回3月調査に続いて悪化した。2四半期連続のDI悪化は、12年12月以来5年半ぶりのこととなる。
景況感悪化は人手不足や原油価格高騰による人件費、原材料費、物流費などのコスト上昇が要因とみられる。また、トランプ米国大統領が鉄鋼・アルミ製品の輸入に関税を適用する措置を発動したことに端を発した米中間の貿易戦争、つまり「トランプ・ショック」が世界経済に悪影響を与えることが懸念され、企業心理を冷え込ませた。
先行きの景況感は横ばいで推移する見込み。これはEU(欧州連合)が米国に対する報復関税を打ち出すなど、米中間の貿易戦争が世界貿易戦争に発展する可能性が出てきたため。加えてトランプ大統領は自動車や部品の輸入にも関税をかける意向を示すなど、トランプ・ショックの拡大を懸念する企業が多いことを物語っている。
こうした企業心理の冷え込みとは裏腹に、設備投資計画をみると、底堅いものとなっている。18年度の設備投資計画は前年度比2ケタの増加と好調そのもの。これは人手不足や生産性向上への対応に余念がないことを示しており、企業はトランプ・ショックに惑わされることなく、自助努力を継続することが求められる。
安倍晋三首相の掲げるアベノミクスの成長戦略は効果をあげるに至っていない。未来投資戦略もいいが、当初の狙いどおり民間活力を生かすための規制緩和・改革を推し進めるべきだ。
さらに、自由貿易を脅かすトランプ大統領に対しては断固とした態度でこれを諫(いさ)めることが同盟国としての務めと肝に銘じてほしい。
(2018/7/3 05:00)