[ オピニオン ]
(2018/8/24 05:00)
モンゴル国と聞いて多くの日本人は大相撲を思い浮かべるだろう。鶴竜、白鵬という東西の両横綱を筆頭に幕内に6人、十両以下に16人の力士が在籍している。あるいは遊牧民とゲル(移動式住居)のイメージだろうか。だが、相撲や遊牧だけでなく中小企業の海外進出先としても注目されているようだ。
同国はロシアと中国にはさまれた内陸国で、ソ連崩壊後の1992年に民主化が始まり、市場経済に移行した。民主化以降、日本は政府開発援助(ODA)を通じて同国の発展を支えてきた。日本への留学生も累計1万人近くにのぼり、現地で日本語教育も熱心に行われている。2016年6月に日本と経済連携協定(EPA)を結んだ。新空港も三菱商事と千代田化工建設が受注し、建設中だ。
同国で最大手の商業銀行であるモンゴル貿易開発銀行(TDB)とTryfunds(トライファンズ、東京都港区、丹野裕介代表取締役)が8月初めに業務提携した。トライファンズは「BIZIT(ビジット)M&A」という企業の合併や買収の案件をつなぐマッチングサイトを運営し、TDBと協力して特に日本の中小企業の同国への進出をサポートする。
日本は人口減少が始まっており、53年には1億人を割ると予測されている。特に生産年齢(15―64歳)人口は1996年から減少に転じ、30年にかけて、生産年齢人口の減少が加速する。人口が減ると、働き手が少なくなり、購買力が減退すると考えられる。内需頼りの中小企業にとっては厳しい状況になるかもしれない。
「BIZITは主に日本の中堅中小企業の海外進出、特に今後の経済成長が見込まれる新興国や開発途上国において成長の果実をつかむことを目的としたサイトで、世界戦略の第1弾としてモンゴルとの提携が決まった」(丹野代表取締役)という。同サイトにはすでに100カ国以上のユーザーが登録しており、今後、モンゴルと同様の提携が進むものとみられる。人口減少時代の中小企業の生き残り策の一つとして期待したい。
(2018/8/24 05:00)