[ オピニオン ]
(2019/3/13 05:00)
自動車業界は100年に一度の変革期とされ、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)関連の開発体制を拡充中だ。自動車以外の製造業も今後はロボットやIoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)の活用が不可避。企業は情報技術を学んだ社員の確保が重要課題。しかし製造業が集積する中部地区では人材の需給ギャップが激しい。大学の学部新設や定員拡大など人材育成を強化すべきだ。
愛知県の工業製品出荷額等は全国1位で2位の神奈川県を大きく引き離す。新技術開発に向けた若い人材の需要も大きいが、採用できる新卒学生は少ない。愛知県下で工業系・情報系の学部がある国公立大学はわずか5校。私立大学もデザイン系や建築系を除くと9校のみだ。
同地区で、全国から不自由なく当該学生を集められるのは数社の巨大企業のみだ。巨大企業の採用枠が大きいだけに、それ以外は著名な大企業でも近年は採用活動に苦戦している。もともと情報系に限らず学生は東京や関西への志向が強く、Uターンを除くと他地区の大学生は中部地区への就職を敬遠する。CASE関連で注目を集める上場企業の社長でさえ「学生が来ない」と嘆く。
地元財界も危機感を募らせる。中部経済連合会は2018年3月に提言「中部圏のイノベーション活性化に向けて」をまとめ、長期では基幹の自動車産業に縮小の可能性があり、イノベーションによる新産業育成の必要性を説いた。ただ、中部はイノベーションを担うソフトウエア産業の集積度は低く、中経連は「関連学科・専攻が経済規模に比してやや少ない」ことを一因に挙げる。
政府は「ソサエティ5・0」でICT活用による新たな経済成長を提唱している。ICTによるモノづくりの高度化はその基盤だ。モノづくりの集積地に未来の成長を担う国公立大学の新設を含めた情報系人材の学び舎を置くべきではないか。大学の学部・学科の新設や定員枠拡大もあわせて議論されることを望む。
(2019/3/13 05:00)