[ オピニオン ]
(2019/3/25 05:00)
英国が欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を予定していた3月29日23時(英国時間)−。EUは「合意なき離脱」を避けるため、離脱実施を短期間延期する二つの選択肢をメイ英国首相に提示することで合意した。3月末での合意なき離脱は避けられるものの、先行きは見えない。これによる日本経済への影響は軽微にとどまるとみられる。ただ、英国やEUで事業を展開する企業は欧州戦略見直しを迫られそうだ。
EUの英国に対する提案は、メイ英首相が提出した協定案を英国議会が数日中に承認すれば、議会が協定案を批准する時間を確保するため、離脱は5月22日まで延期する。同案が承認されなかった場合、5月に実施される欧州議会選挙に英国が参加するかどうかを英国が表明する期限の4月12日まで延期するといった内容と見られる。
当面の合意なき離脱という事態は免れたとはいえ、メイ首相の協定案を英国議会が承認するかどうかは不透明。協定案が承認されず、4月12日まで延期されても、道筋は見えてこない。
ただ、英国政府、英国産業界、EUにとっても、マイナス面の影響が大きい合意なき離脱は避けたいところだ。
再国民投票については、最大野党である労働党の方針転換で、以前より現実味を帯びているものの、議会の過半数を得られる見通しは立っていない。
結果的に「合意あり離脱」の可能性が高くなる。ただ、協定案が承認されたとしても、関連法案整備に時間はかかる。
日本にとって、貿易相手国としては、北米とアジアが2大市場だ。欧州はそれに次ぐ第3の市場に過ぎない。このため、「世界的な金融システム危機を引き起こさない限り限定的」(ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり主席研究員)とみられる。
ただ、「合意あり離脱にしても、再国民投票という道をたどったにせよ、先行きの不透明さは年単位で続く」(同)。拠点再編の対象となりやすく、日本企業は事業の状況に応じた欧州戦略の再構築が求められそうだ。
(2019/3/25 05:00)