[ オピニオン ]
(2019/8/1 05:00)
米フェイスブック(FB)が2020年の発行を目指す新金融サービス「リブラ」をめぐって、波紋が収まらない。FBは「世界中の人に、安価な送金・決済サービスを提供する」のが狙いだという。新たな金融サービスの登場は今後の金融政策や規制のあり方に一石を投じる。
リブラとは何か。暗号資産(仮想通貨)というより、既存の主要通貨建て金融資産を裏付けとして発行される流動性の高い投資信託類似型商品に近い。MRF(マネー・リザーブ・ファンド)やMMF(マネー・マネジメント・ファンド)のような金融商品だ。
利用者は、取り引きを仲介する企業を通じドルや円などでリブラを購入し、FBの子会社などが提供するスマホアプリで送金したり、ネット上の買い物やサービス利用時の決済ができる。資産口座が容易に取得でき、ネットで購入できる商品やサービス支払いに使え、さらに個人間で受け払いできるようになれば、国際的な小口決済や途上国の国内決済で、現金や銀行送金、クレジットカード決済に代わり広く使われる可能性もある。
一方、リブラに対する懸念も広がる。FBの利用者が約27億人と巨大で、利用者間で流通すると、ドルや円、ユーロなど既存通貨でつくりあげられた金融秩序が脅かされるためだ。国家が管理する通貨とは違うお金が大量に流通すると、物価を安定する金融政策に影響を及ばす可能性がある。資金洗浄や不正送金の温床にもなりかねない。
主要7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)は、主要20カ国・地域(G20)や主要国の金融当局で構成する金融安定化理事会(FSB)などと連携し、規制の枠組みづくりを目指す。ただ、道筋は見えない。日本の改正資金決済法では、法定通貨の裏付けのあるものは暗号資産ではないとしている。現行法では銀行か資金移動(決済)企業という扱いになる可能性もある。
複数の通貨や国債を裏付けとすることから、従来規制ではカバーが難しく新法が必要との意見もある。新時代の金融政策や規制について議論を深めたい。
(2019/8/1 05:00)