[ オピニオン ]
(2019/8/7 05:00)
厚生労働省の中央最低賃金審議会(最賃審、厚労相の諮問機関)の小委員会が、2019年度の最低賃金の目安額を全国平均で27円引き上げ、時給901円にすることを決めた。現在の最賃は全国平均で874円。今回示した引き上げ幅は18年度を1円上回る。人材確保と人件費増に苦しむ中小企業へ政府の支援が求められる。
目安額は都道府県の経済情勢や雇用などに応じてA〜Dの4グループに分類して示した。各都道府県の最賃は毎年、政府と労使代表者で構成する最賃審から示される引き上げ目安を参考に、8月中に地域別最賃審議会が金額を決定。その年の10月から効力が発生する。
東京都や神奈川県などAランクは28円の引き上げ目安を示した。最賃審の目安通りに引き上げられれば、全国加重平均最賃で初の900円台に乗せ、東京都と神奈川県は初めて1000円を超える。中小企業や旅館、小売業などサービス業への影響は大きい。
京都府や栃木県、茨城県などBランクの引き上げ目安は27円、群馬県や北海道などのCランクと青森県や鹿児島県などのDランクは26円。地域間格差の是正も焦点となった。Dランクの引き上げ率は平均3・4%と4グループの中で最も高くなったが、絶対額の格差はさらに広がる。放置すれば都市一極集中に拍車がかかりかねない。
審議会メンバーは7月30日の午後から翌日未明まで徹夜で議論した。連合など労働側は全ての都道府県で800円以上にするよう主張したが、日本商工会議所は「中小企業の経営に重要な影響を及ぼす」と懸念を表明した。
最賃審はここ3年、3%程度の最賃引き上げ目安を示してきた。今回も3%を超え、このままのペースで最賃が上がれば23年度には政府目標の全国平均1000円を達成する。
最賃の底上げは消費を刺激する材料だ。ただ1000円を達成しても年収200万円に届かない非正規社員が労働者の半数近くを占める。早急に最賃のあり方を根本的に見直すべきだ。
(2019/8/7 05:00)