[ オピニオン ]
(2019/9/2 05:00)
2020年度予算編成に向けた各府省の概算要求が出そろった。目を引くのがデジタル経済への対応とイノベーションで、福島をはじめとする東日本大震災からの復興と近年深刻化する水害・土砂災害対策は、引き続き重要課題である。19年度予算は、一般会計総額が当初段階で初めて100兆円を超え、7年連続で過去最大を更新した。20年度予算の編成過程では、歳出膨張を抑えつつ、重点分野への配分とムダの削減を両立させたい。
文部科学省は、研究に関わる人材・資金・環境の改革と大学改革をパッケージとした一体的な取り組みに19年度当初予算比20・8%増の5484億円を計上した。若手研究者の研究環境の整備や国際競争力強化に向けた研究拠点の形成などにより、イノベーションを生み続ける社会を目指す。人材・資金・環境の3分野と、大学改革を一体的に展開する狙いだ。
経済産業省もイノベーションを生み出す環境整備に力点を置く。研究者の育成や「ソサエティー5・0」実現の研究開発・社会実装に、同40・3%増の871億円を盛り込んだ。デジタル経済への対応では、最先端人工知能(AI)技術の活用によるビジネスモデルの構築支援などを掲げている。
防災・減災・国土強靱(きょうじん)化では、予算措置とともに、その中身にも目を向ける必要がある。交付金によって地方自治体へ予算を渡しきりにするのではなく、国の直轄事業と連携を図ることにより、水害・土砂災害対策の実効性を高めていくことも必要であろう。
20年度概算要求においては国際競争力強化のための人材育成や、デジタル化の推進、AI戦略などの分野で各省類似の施策が散見される。経団連はかねて、政府内に分散するデジタル経済戦略を統一し、データ利活用をめぐる国際議論をリードする体制を求めている。研究者からはAI関連予算が小粒化しているとの指摘もあり、イノベーションの推進やAI技術の普及促進に向け、省庁横断で知恵を絞ることが求められる。
(2019/9/2 05:00)