(2022/9/20 05:00)
政府は安全保障のあり方を国民に問わねばならない。
2023年度の税制改正は例年とは大いに様相が異なる。新型コロナウイルス対策と防衛費の増大に対し、それに充当する税収を企業に求める流れが強まっているからだ。
与党税制調査会は22年度の税制大綱に「近年の累次の法人税改革も、意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない」と明記した。法人実効税率の引き下げに比べて経済成長が進まないとして政策転換を予告したものだ。
産業界の各団体は税制改正要望をまとめている。個別には研究開発税制や不動産課税、自動車関連税など重要課題もある。しかし「そうしたテーマを論じる前に、政府が厳しい判断をするかどうかが最大の焦点」(経団連関係者)という。
中でも課題は防衛費の増大である。防衛費を現状の国内総生産(GDP)比1%程度から2%へ引き上げると、毎年5兆円もの歳出増となる。歳入面でも大きな増税が必要だ。
政府部内には、防衛費の主要な支出先が防衛産業であることを理由に法人増税を模索する動きがある。しかし国内メーカーは生産能力の問題から、急激な予算増をビジネスに結びつけにくいのが実情だ。先端装備には海外からの購入品も多い。
何より所得税や消費税に手をつけにくい政治的状況で、課税しやすい法人税が狙われている疑いが捨て切れない。安全保障は国益そのものであり、平和と安全に直結する。政府はきちんと国民に説明して理解を求めるべきであり、企業増税で済ませてはなるまい。
企業の側も「成長と分配の好循環」という政府の期待に応えるべく、さらに努力しなければならない。賃金はもともと遅効性の強い指標であり、物価上昇が鮮明になった今の局面では、より分配を強める企業が増えるだろう。デジタル化やグリーン化などのイノベーション投資も加速が必要だ。
産業界の活力を失わせかねない税制改革は認められない。政府には慎重な議論を求める。
(2022/9/20 05:00)
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