(2022/11/9 05:00)
電力の需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの環境価値を非化石証書で直接調達できるようになった。証書を保有する企業は再エネを購入したとみなされ、企業価値を高められる。中小企業の利用を促進し、再エネ拡大に弾みをつけたい。
同手法は電力取引を伴わないため仮想の電力購入契約を意味するバーチャルPPAという。需要家は小売電気事業者を介さず、従来の電力契約を継続したまま複数拠点で使う電力の環境価値をまとめて取得できる。
消費電力の大きな工場や商業施設は、太陽光などの自家発電だけでは社内の脱炭素電力を賄えず、不足分をバーチャルPPAでカバーできる。脱炭素が進む欧米の企業では再エネ調達の主流になっている。
発電事業者は需要家と合意した固定価格と市場価格の差額精算により安定収入を確保できる。資金調達がやりやすくなり、再エネ固定価格買取制度(FIT)の売電価格が低下する中で非FIT発電設備の新設を促し収益力の向上が図れる。
国民経済にもプラスの効果が見込める。取引対象は卒FIT電源と新設の非FIT電源(2022年4月以降商業運転開始)。FITに依存しない再エネが拡大すればFIT原資の再エネ賦課金を抑制できる。
中小企業まで利用を広げるには使い勝手を高める工夫や認知度向上が欠かせない。
部品供給網や工業団地などを構成する企業がまとまって脱炭素化に利用する場合、各社が発電事業者と個別に契約するのは効率的ではない。証書の共同購入や分配の仕組みができれば中小企業の利用促進につながる。
需要家への認知度向上を図る必要もある。証書保有により環境対策に熱心な企業として評価が高まれば、資金調達や取引先開拓、新卒採用などに好影響が期待できよう。国は先進事例を示し普及啓発に注力すべきだ。
資源価格の高騰で電気代の値上げが続くとみられる一方、太陽光をはじめ再エネの発電コストは低下傾向にある。再エネが低廉で安定的な主力電源となる時代を引き寄せたい。
(2022/11/9 05:00)
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