(2023/3/8 05:00)
中国の習近平政権が全国人民代表大会(全人代)で示した政府活動報告は、2023年の実質成長率を手堅く5%前後に設定した一方、国防費はこれを上回る前年比7・2%増と大幅に増強する内容だった。24年の台湾総統選挙を見据え、軍拡により台湾海峡への威嚇を強めることが懸念される。西側諸国は台湾有事を見据えて供給網での脱・中国の動きを進める。中国の国防費の大幅増額は、経済での中国依存低下を促すだけだと習政権は肝に銘じてもらいたい。
実質成長率5%前後は、3%成長の22年からの反動を考えれば手堅い数字だ。中国は複数のリスクを抱えており、目標の達成を最優先にしたとも言える。17%超の若者の失業率や不動産市場の低迷、地方政府の財政難、米国による先端半導体などの対中輸出規制、さらにコロナ禍の再拡大などに懸念が残る。世界経済の減速は中国の輸出環境も悪化させる可能性がある。
政府活動報告で格差是正「共同富裕」に言及しなかったのも景気への配慮とみられる。これまでは中国政府を上回る個人情報を持つIT企業や所得格差を誘発した不動産業への規制を強化。多額の罰金や融資規制などを講じてきたが、すでに締め付けを緩めつつある。習氏が民間活力の重要性を再確認する契機になると期待したい。
他方、習政権は景気回復を最優先するとしながら、財政赤字の名目国内総生産(GDP)比率は23年が3%と前年(2・8%)とほぼ同規模。一方、国防費は前年比7・2%増への大幅な増額で、3年連続の増額となる。ウクライナ情勢でロシアを苦しめる米欧の先端軍備への対応、さらに祖国統一を見据えた軍拡と言え、米中対立の溝が一段と深まるリスクをはらむ。
中国はウクライナ情勢でロシアへの経済制裁の抜け道となり、軍事支援も取りざたされる。今回の政府活動報告でも、内需拡大による経済回復を最優先課題としつつ、軍拡路線が強調された感は否めない。西側諸国は中国といかに向き合うのか、習政権との対話の継続がますます重要度を増すことになる。
(2023/3/8 05:00)
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