社説/インバウンド回復 人手不足と地域間の格差に懸念

(2023/2/17 05:00)

インバウンド(訪日外国人)需要が回復している。2022年10月の水際対策の緩和が奏功し、1月の訪日客数はコロナ禍前(19年1月)の56%まで回復した。インバウンドは地域経済に寄与するだけに順調な拡大に期待したい。ただ訪問先の地域に偏りがあり、サービス産業は人手不足の課題も抱える。政府が3月に策定する新たな観光立国推進基本計画などを基に、官民で効果的な対策を講じたい。

日本政府観光局によると1月の訪日客は149・7万人。インバウンドが最も多い韓国はコロナ禍前の73%、台湾は67%まで回復し、香港はほぼコロナ禍前に戻った。入国者数の上限撤廃、個人旅行の解禁、短期滞在でのビザ(査証)免除など、22年10月に講じた水際対策の緩和が寄与している。中国は4%程度の回復にとどまるが、日本政府は中国を対象とした水際対策を月内にも緩和する検討に入った。入国者の陽性率が低く、全入国者対象の新型コロナ検査を無作為抽出のサンプル検査にとどめる方向だ。インバウンドの本格的な回復が期待される。

ただサービス産業は人手不足が深刻化しつつあり、事業者によってはインバウンドが増えても十分に対応できない機会損失となりかねない。非正規雇用者が多いサービス業の処遇改善や、外国人労働者の活用、デジタル化による業務効率化など、でき得る対策を急ぎたい。

他方、インバウンドの訪問先は東京、大阪、京都、北海道などに偏りがちで、インバウンド需要の地域格差を是正しなければ地方創生はおぼつかない。

国土交通省は、政府が3月に決定する観光立国推進基本計画(23―25年度)の素案をまとめた。25年度にはインバウンド数を19年の3188万人を超える水準とし、インバウンド1人当たりの消費額も20万円(19年は15・9万円)に引き上げる。地方を中心に滞在日数を1・5泊(同1・35泊)に増やす目標も掲げ、経済効果を高める「質」を追求するのが特徴だ。

この効果をいかに地方に波及させていくのか、基本計画で示される処方箋を注視したい。

(2023/2/17 05:00)

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