[ その他 ]
(2016/1/21 05:00)
賀詞交歓会を回って感じたのは、官僚のあいさつで経営者に賃上げをお願いする話が多かったことだ。”官製春闘“も3年目だが、今年は昨年より力が入っていたように思える▼賃上げで個人消費が増え、企業の投資意欲が沸き、それが成長率向上につながる「経済の好循環」は、安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の専売特許ではない。10年ほど前の春闘で労働組合が訴えていたスローガンそのものである▼官僚の要望を聞いていた大手企業の経営者は、一様にうんざりした表情だった。マクロでは好循環論に賛同しつつも「我々が(賃上げで)頑張ったとして、本当にデフレ脱却ができるのかね」という疑問の声も▼さらに印象的だったのは、業績好調企業の労務担当役員が、つい「要求以上には回答できないよね」と漏らしたこと。業界内に大きな格差があると、横並びを求める春闘方式では組合側は踏み込んだ要求をしにくい。官製春闘に限界が見えてきたのかもしれない▼労使交渉もいよいよ本番。原油安が進んでデフレ脱却が遅れる一方、来春の消費税率引き上げを控えて、難しい協議となるだろう。政官財も労使も、日本経済の浮揚を願う思いは同じ。実りある論議を期待したい。
(2016/1/21 05:00)