[ オピニオン ]
(2016/6/29 05:00)
大昔から人は、手先に代わる道具を使って衣食住に必要なものを作った。その後、織機の発明や蒸気機関という動力系の機械化によって産業革命が起こった。人手では無理な短時間での量産を機械が実現した。さらにコンピューターが出現し、記憶や計算を代わりにやってくれるようになった。
そして今、コンピューターは通信技術と相まって進化を遂げ、人の脳や神経系を代替する領域に入ったかのようだ。すべてのものを結び付けるIoT(モノのインターネット)やビッグデータ、人工知能(AI)、そしてロボットの活用で、産業構造が大きく変わりそうだ。
2016年度に始まった第5次科学技術基本計画は、サイバー空間と現実空間が融合し、新たな産業が創出される社会を「超スマート社会」と規定。それを目指すわが国独自の取り組みを「ソサエティ5・0」と称している。これを受けた今年の科学技術白書は、超スマート社会を世界に先駆けて実現するための取り組みの方向性を示した。
同白書は「AIやロボット技術などの革新に伴い、危険な場所での労働や肉体労働、知識集約型専門業務の支援などの代替による安全性向上や生産性向上が進み、人間は創造的な仕事、世代間交流の増加、文化・伝統の継承を可能とし、生き生きと豊かな生活を送ることを可能にする」としている。奴隷に働かせて文化活動にいそしんでいた古代ローマの貴族のような世界に聞こえなくもない。
現在は国内総生産の2割程度とはいえ、日本の高度経済成長を演出し、産業の国際競争力を支えてきたのはモノづくりである。ロボット技術は日本が優位だが、それ以外のAIやビッグデータなどは米欧に後れをとっている感がある。
AI搭載ロボットが生産ラインでロボットをつくり、そのロボットが人に必要なモノを製造するような社会があるかどうか。それは別にしても、モノづくり企業も「超スマート社会」の構成要素を念頭に、経営戦略を練らなければならない時代になったといえそうだ。
(2016/6/29 05:00)
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