[ オピニオン ]
(2016/7/12 05:00)
東京・本郷は医療機器の“聖地”。東京大学医学部の周辺に約130社の関連業者が集積している。その中に「いわしや」を社名に冠した医療機器卸が多く存在する。
実は、この珍しい名は由緒ある屋号。かつては「『いわしや』を名乗るだけで商売ができた」と古老がいう信頼の“のれん”でもある。商社だけでなく、滅菌装置や病理診装置などを製造販売するサクラグローバルホールディング(東京都中央区)も「いわしや松本市左衛門」を源流とする。
今から400年以上前。堺の商人が、網元の名をいわしやと名付けた。それが漢方薬を扱うようになり、江戸に出て薬種店(やくしゅだな)を開く。やがてメスやハサミなどの外科道具に手を広げて医師の信頼を獲得。のれん分けを繰り返して全国に広がった
。
こうしたいわしや系企業が集まって1997年に発足した「平成いわしや会」が、先ごろ20周年の記念式典を開いた。昭和30年代に80社を数えたものの業界の淘汰(とうた)が進む中で今では20数社になった。
数は減っても医師との緊密な関係は健在だ。会長でいわしや西方医科器械(神奈川県平塚市)会長の西方晃さんは「時代は変わっても医療業界に携わり続ける」と話す。「いわしや」のDNAは今も息づく。
(2016/7/12 05:00)