[ オピニオン ]
(2016/8/9 05:00)
北九州市は65歳以上の高齢者人口が28%超と、政令市で最も比率が高い。普通なら高齢化は産業の活力を失わせるが、北九州では、逆にこれを新事業に結びつけようという動きが企業の規模に関係なく活発になっている。近未来の超・高齢化社会に向けた“一歩先行く高齢者ビジネス”に注目したい。
タクシー事業を全国展開する第一交通産業は8月から、本社を置く北九州市で綜合警備保障と連携した高齢者向け位置情報サービスを開始した。高齢者に近距離無線通信規格(BLE)タグを配布。高齢者がこのタグを持って外出し、専用アプリをインストールしたスマートフォンとすれ違うたびに自動的にサーバに位置情報を記録する。
第一交通のタクシー運転手やグループ会社社員、その家族がそれぞれ自分のスマホにアプリを導入。地域住民にも協力を求める。高齢者が見当たらなくなった時に、サーバ上のデータで捜索が可能になる。軌道に乗れば、このサービスを北九州市以外にも広げる計画だ。
九州工業大学発ベンチャーのひびきの電子(北九州市若松区)は、ラジオ周波数電波を使って心拍や呼吸、体動などの生体信号を検知する見守りセンサーを開発した。目覚まし時計型のセンサーを室内に複数置き、異常が起きた場合は登録先の家族にメールで連絡する。2017年春から市内の介護施設でサービスを始める。
ウチヤマホールディングスは九州歯科大学と連携し、入居者の口腔(こうくう)ケアを始めた。口腔内を清潔に保つことが健康につながるという。出張治療を担当する九州歯大の歯科教育にもつなげる。介護福祉を手がける企業が大学と連携するのは全国でも初の事例として注目されている。このほかフジコー(同戸畑区)も、経営する介護施設に自社開発した光触媒製品を設置して感染予防や防臭対策に成功している。
いずれの事例も、まだ萌芽(ほうが)に過ぎない。だが高齢化に悩む大都市で、課題を逆手に新ビジネスに活路を見出すことができれば、新たな可能性が広がる。
(2016/8/9 05:00)