[ オピニオン ]
(2016/8/23 05:00)
米国の次期大統領の有力候補が環太平洋連携協定(TPP)に反対の姿勢を明確にしていることが、日本の産業界に不安を与えている。政府は米国以外の参加国と連携するなどして、粘り強くTPP発効に向けた努力を重ねるべきだ。
日本では、まだ「米大統領候補のTPP反対は選挙向けのポーズであり、当選後には条件付きで賛成に回る」という希望的観測がある。しかし共和党のドナルド・トランプ候補の強硬な反対論が、簡単に変わるとは考えにくい。民主党のヒラリー・クリントン候補も先日、当選後も反対を翻意しないとあらためて強調した。
空洞化が進んだとはいえ、我が国経済を支えているのは今でも高付加価値製品の輸出だ。新興国経済の急成長にブレーキがかかった状態のまま、TPPという巨大な商圏を日本が得られないとしたら、関連業界へのダメージは計り知れない。
経団連など経済4団体は、7月の参議院選挙終了後に連名で「TPP協定の早期実現を求める」という意見書を発表した。これとは別に、独自の緊急コメントを出したのが日本鉄鋼連盟だ。鉄連から見たTPPは「画期的な経済連携協定。特に鉄鋼製品は最長でも発効後11年目に全ての関税が撤廃される」(会長コメント)と強調するほど重要なものだ。
ただでさえ鉄鋼業界は現在、貿易摩擦に悩まされている。中国の過剰生産と安値輸出に対して各国がアンチダンピングや相殺関税措置、緊急輸入制限を相次いで発動。そこに日本の鉄鋼製品の輸出が巻き込まれた。鉄連によると、7月時点で発動中または調査中のアンチダンピング案件は207件。このうち中国製が110件と半数以上を占めるが、日本製も31件に上る。
安倍晋三首相は参院選で経済最優先を公約した。経団連などは「わが国が率先して(TPPを)承認することで、米国をはじめとする参加国の国内手続きを促すべきである」と主張している。TPP交渉には最後に加わった日本だが、発効に向けたリード役となってほしい。
(2016/8/23 05:00)
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