[ 機械 ]
(2016/11/19 09:00)
【スミヤ精機/MC「e500H―GS」 “先端”歯車加工法で時短】
スミヤ精機は産業機械や繊維機械向けの歯車製造を手がけている。ホブ盤などの歯切り盤を利用し、駆動系や伝達系のギア部品を生産しているが、名倉隆司社長がかねてより課題と感じていたのが「ギアシェーパーが少ししかないこと」。ホブ盤より生産性が落ちる分、内歯や段つきの歯車を作るのに適するシェーパー加工が可能なギアシェーパーの手薄さが不安の種だった。
そこで2014年春に政府のモノづくり補助金を活用して、機械の新規購入に踏み切った。だが、選んだのはギアシェーパーではない。ジェイテクトのマシニングセンター(MC)「e500H―GS」(現GS300H)だ。
スカイビング加工という新しい歯車加工法を、MCにいち早く取り入れた革新的な機種だった。設備導入で「弱みを強みにする」と意気込んでいた名倉社長は、シェーパー加工より効率が高いこの先端技術に飛びついた。
実際に試してみると、ギアシェーパーより「少なくとも半分ぐらいの時間で加工できる」ことがわかった。また複数の加工に対応することも強み。例えば、一つの加工物に対し外歯を削ってから、内歯を削り、さらに穴開けをするといった連続加工も可能だ。
従来なら外歯切り、内歯切り、穴開けの各工程ごとに、加工物を設置し直したり、別の機械に加工物を移したりする作業が必要だったが、MCでもあるこの機種は1台で全ての工程をまかなえる。かつ、いったん加工物をセットするだけで作業を完結できた。
とはいえ、ノウハウの蓄積がない新しい加工法ゆえ、最適な加工条件を探るのに試行錯誤を積み重ねた。その都度、ジェイテクトに対して助言や情報を求めた。「サポート体制が良くありがたい」と満足げだ。
複雑形状の歯車製造や生産時間短縮の手応えを得た名倉社長。最先端の機械がビジネスの裾野を広げることへの期待を膨らませている。
【企業メモ】
▽事業内容=歯車加工
▽所在地=愛知県高浜市
▽社長=名倉隆司氏
▽電話=0566・53・0305
▽資本金=1000万円
▽従業員数=55人
▽設立=1960年6月
【三陽アキュラシー/NC円筒研削盤「PD32」 長軸研削精度1マイクロ―2マイクロメートル】
三陽アキュラシーは1952年創業の老舗鉄工所。ロボットや工作機械スピンドルなどの軸部品の超精密加工に強みを持つ。2014年以降、マシニングセンターや数値制御(NC)旋盤を次々に刷新。全てのマシンを、各軸移動量と実際に移動した距離を測り制御装置にスケールフィードバックするフルクローズループにし、精度を追求している。
16年3月には三菱重工業製のNC円筒研削盤PD32を導入。新たな挑戦に乗り出した。目的は軸部品で求められる小さな段差R部の精密研削だ。「昔はR部まで研削を要求されることは少なかったが、近年ではニーズが拡大している」(水戸祥登工場長)という。
段の隅をぬすみ(ネッキング)加工すれば研削がしやすいが、強度目的のRをネッキングすれば応力負荷が集中する問題がある。同社はPD32と特殊プログラムを活用し、大きさが異なる複数のRが並ぶ長手の軸を、一つの砥石(といし)でトラバース(横移動)研削する技術を確立。要求精度が高いロボットの駆動系軸部品などの加工ニーズに対応している。
同社のマシン選定基準は、精度が出せるかどうか。PD32も「砥石が斜めに動く方が分解能が高く精度が出しやすい」(同)とし、アンギュラタイプを選んだ。既に、同社では公差2マイクロメートルは“普通”。1マイクロ―2マイクロメートルの要求も増えてきているという。
マシン性能にこだわる同社だが、水戸工場長は「NC機はどの企業が使っても同じ精度が出せるわけではない」と語る。ワーク(加工対象物)に合わせた刃物設定や精度を出せるツールパス(刃物の動き)の条件をいかにプログラムに盛り込むか。加えて、機械を置く地盤も重要要素に挙げる。
同社では、共振を抑制するため地盤を1メートルの厚みのコンクリートにしている。「マシンのベース性能やプログラム、機械設置面など、要素の一つでも欠けると顧客や自分たちが求める精度は出せない」(同)。超精密加工分野で競争力を磨くための挑戦が続いている。
【企業メモ】
▽事業内容=切削・研削加工による部品生産と試作
▽所在地=大阪市福島区
▽社長=横山利治氏
▽電話=06・6452・3477
▽資本金=500万円
▽従業員数=9人
▽設立=2014年1月
【11/16付本紙別刷「JIMTOF2016特集」より】
(2016/11/19 09:00)