[ ロボット ]
(2016/11/25 05:00)
今後の高い成長が見込まれるサービスロボットだが、その役割は人寄せばかりにあるわけではない。IoT(モノのインターネット)が本格化する時代には、フロントエンドデバイスとして人から情報を収集する役割が求められるのだ。
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)はすべてのモノがインターネットにつながることであり、その「モノ」とはパソコンやスマートフォンなどの情報通信機器のみならず机や椅子など身の周りのあらゆるものを対象とする。
IoTの目的は、センサーを搭載したモノ(フロントエンドデバイス)で情報を収集し、インターネット経由でクラウドに蓄積して分析し(必要に応じてAIも活用する)、その結果をモノを介して人にフィードバックさせることにある。そのフィードバックとは、人が抱える課題の解決や新しい提案などを意味する。
IoT のフロントエンドデバイスとしてサービスロボットも用いられるが、パソコンやスマホなどのフロントエンドデバイスと大きく異なるのが人に能動的に働きかけることだ。身振り・手振りの動作や会話などで人に働きかけるところが他のIoT フロントエンドデバイスにない特徴と言える。
そのサービスロボットについて政府は、2015 年の「ロボット新戦略」で市場の成長目標(2020 年に現在の約2 倍)を示し、それに沿うように実際にサービスロボットは広く社会から注目され、かつビジネスシーンにも浸透し始めている。
注目されるコミュニケーション型ロボット
ビジネスにおけるサービスロボットの用途も医療、警備、介護・福祉、接客・案内などさまざまあるが、特に2015年秋にソフトバンクのPepperが登場して以降、人工知能(AI)を活用し、巧みに会話するコミュニケーション型ロボットが注目されている。
コミュニケーション型ロボットは集客を目的として店舗に導入されることが多い一方、2015年以降は多言語に対応することによって受付や接客への導入も始められている。つまり単なる客寄せに留まらず、人の仕事をサポートする目的での活用も図られているのだ。
人間は恣意的に情報を集める
ところでIoT の目的は、既述のように課題解決と新提案にある。それは、自らの製品やサービスを介して新しい提案、つまり新しい価値を顧客に提供することであり、そのためにも顧客が自らの製品やサービスをどう使っているのを的確に把握することが重要だ。そこにIoT フロントエンドデバイスとしてのサービスロボットの本当の役割があると言っても過言ではない。
人間は無意識のうちに恣意的に情報を集めてしまう生き物だがロボットは違う。プログラムを設定すればあらゆる情報を記録する。それがロボットの特徴でもある。その特徴を活かせば、人間では収集できなかった情報を収集・蓄積し、分析することでいままで気付けなかったことに気付けるという可能性ももたらされる。
情報収集のために重要なこと
サービスロボットを情報収集のためのフロントエンドデバイスとして活用するためのポイントについて大阪工業大学工学部ロボット工学科の本田幸夫教授はこう指摘する。
「サービスロボットでユーザーから情報収集するためのポイントは、ユーザーにわずらわしいと思わせないように接触することです」
たとえば、小売の現場には広くPOSシステムが導入され、それにより顧客の購買情報が取得でき、またPOSデータをベースに売れ筋の傾向なども分析できている。そこからさらに一歩進んで顧客へ新しい価値を提供するためには、店舗に入ってきた顧客をマスキングして性別、年齢さらには趣味や購買力まで瞬時に分析し、それに基づいて接客・提案するようなサービスロボットを確立することだ。
そのようなスマートなロボットに仕上げるためにも顧客から多くの情報を収集しなければならず、そこで重要になるのが相手(人)にストレスを感じさせないようにコミュニケーションすることだ。たとえば、POSシステムのように「ピッ」と読み込むだけで情報収集できるような、ストレスレスなコミュニケーションができるロボットにすることだ。
繰り返しになるが、IoT時代に新しい価値を生み出すためには、フロントエンドデバイスであるサービスロボットでいかに人から情報を収集するかが重要になる。また、情報収集するうえでのポイントはその存在を人に意識させないようにコミュニケーションできることだ。そうでなければ「監視カメラとPOSシステムとの組合せで、個別の顧客に対応するのに十分となってしまう」(本田教授)。つまり、情報収集のためのフロントエンドデバイスとしてサービスロボットの存在意義がなくなってしまうのだ。
人とサービスロボットとの共存のために
IoTのフロントエンドデバイスとしてサービスロボットを活かすためにも、「世の中で確認することがなにより重要で、それによってロボットが単なるセンサーとは異なることを証明できる」(本田教授)ようになる。
本特集でもレポートしているが、現在、Pepperをはじめさまざまなサービスロボットが実用化され、また、さまざまな実証実験が実施されている。それにより社会生活やビジネスの中で人とサービスロボットが共存できることを確認している。
IoTの真の目的である新たな価値を提供するためにも、フロントエンドデバイスとしてサービスロボットが人とコミュニケーションをとり、スムーズに情報収集できるようにすることが大きなカギとなっていく。
(2016/11/25 05:00)