[ オピニオン ]
(2016/12/5 05:00)
国が定める40年間の運転期限に達した原子力発電所の廃炉や東京電力福島第一原発の事故処理にかかる費用の一部を、新電力に負担させる案を経済産業省が検討している。新電力側の反発は強いものの、原子力はエネルギー政策上、重要な役割を担うベースロード電源だ。国民にこの点への理解を深めてもらい、原子力を支えていく仕組みをつくる必要がある。
経産省の案では、新電力が大手電力各社に支払う託送料金に原発関連費用を上乗せする。原子力規制委員会が原発の運転期限を原則40年間と定めたことを受け、廃炉作業を前倒しする場合の費用の不足分などが対象。託送料金の上乗せ分を新電力が料金に転嫁すれば、国民全体で分担することになる。
新電力にとっては電力小売り事業の敵に“塩を送る”格好となり、反発が強い。それでも原子力を支える意義は大きい。
原発は火力発電に比べて燃料代が安く、燃料調達を巡る地政学的リスクも小さいためエネルギー安全保障政策上、欠かせない電源だ。発電の際に温室効果ガスを出さないクリーンなエネルギーであり、地球温暖化防止にも貢献する。同じクリーンエネルギーの太陽光や風力のように天候要因で出力が大きく変動することもない。
国内産業の競争力や温暖化対策の実効性を高める上で、原発が果たす役割は大きい。電力会社を取り巻く環境が激変する中で、これをどう支えていくかを国民全体であらためて考える必要がある。
新電力の力を借りるのなら、ライバルである原発を支えることの利点を、より強く実感できるようにすべきだろう。電力各社が原発でつくったコスト競争力が高い電気の一部を電力の卸取引市場に供給し、新電力が小売り事業の商材として使えるようにすることが期待される。また太陽光などの再生可能エネルギーを売り物とする新電力に、どのような便宜を図るべきかも考える必要がある。
原発がもたらす利益を事業者間でどう分かち合うかを含め、国民的な議論が待たれる。
(2016/12/5 05:00)
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