[ オピニオン ]
(2016/12/27 05:00)
鉄鋼価格が世界的に急上昇している。最も基礎的な産業資材だけに、今後の企業業績にも影響しそうだ。
原因は、ひとえに原料炭と呼ばれる石炭(強粘結炭)の高騰だ。強粘結炭は製鉄用の還元剤であるコークスの原料となる。鉄鋼メーカーは資源会社と交渉し、3カ月ごとに買値を改定することになっている。
7―9月の原料炭1トンの価格は92・5ドルだった。それが10―12月は一気に200ドルに跳ね上がった。鉄鋼メーカーは原料炭高騰の影響を、製品である鋼材1トン当たり1万円の値上げに相当すると計算している。
さらに2017年1―3月の原料炭は285ドルで決着。鉄鉱石もじりじり上昇しており、最近の円安傾向が加わって円換算の買値を膨らませている。こうしたことから鉄鋼メーカーは、さらに鋼材1トン当たり1万円の追加値上げが必要だと主張している。
価格上昇は、中国国内の洪水被害で石炭の輸送網が寸断されたことや、豪州での炭鉱トラブルなど、供給障害が相次ぎ発生したことが一時的な要因として挙げられる。
これとは別に構造的要因となっているのが、中国の炭鉱の操業規制。石炭の過剰生産解消が目的だが、中国政府はこれに乗じて赤字経営の鉄鋼メーカーを整理し、各国から非難されている鉄鋼の過剰能力の解消につなげることを狙ったとみられる。原料炭で操業規制を緩め、増産する動きは乏しいという。
また、かつて石炭価格が急落した際に米国の炭鉱の多くが閉山してしまったことも価格の硬直性を強める要因となっている。夏頃から原料炭のスポット価格が急騰。スポット取引は一部の投機的な売買で急変しやすいが、これに引きずられて相場そのものが上昇した形だ。
鉄は自動車や機械、建設など多くの産業に深く関わる。コスト削減に日々努力する産業界の各社にとって頭の痛い問題だ。ただ海外でも値上げは進行している。十分に対話をした上で、価格改定や消費者への転嫁の必要性を見極めてもらいたい。
(2016/12/27 05:00)
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