[ オピニオン ]
(2017/1/25 05:00)
霞が関の官庁街の中でも異色の存在が、文部科学省の「情報ひろば」だ。2008年の新庁舎移転時に、旧文部省庁舎の一部を保存して開設した。
一角に1933年(昭8)の旧庁舎完成時の大臣室を再現し、初代の森有礼(ありのり)文相以来の歴史的資料を飾る。このほか文部科学行政の展示、所管法人・大学の広報や交流にも活用する。閉館した国立教育会館の代替の意味もあるだろうが、これほど大きなPR施設を本省に置く省庁は他にない。
霞が関では伝統的に政策決定官庁が注目され、自ら業務を遂行する現業官庁は地味な存在。学校組織を運営する旧文部省は後者の代表だった。発信力を強めたいという思いが「情報ひろば」に宿る。
もっとも2001年の省庁再編で科学技術行政と一体化した文科省は、印象を大きく変えた。日本人が毎年のようにノーベル賞を受賞し、宇宙開発や海洋探査で成果を上げるなど、さまざまな面で国民にアピールしている。
その文科省で退職した幹部の“天下り”あっせんが発覚し、事務方トップの引責辞任に発展したことは残念でならない。古い悪習を変えきれなかったのか、変えずにいたのか。霞が関から不祥事が社会に発信されるようなことを、歴代文相は望むまい。
(2017/1/25 05:00)