[ オピニオン ]
(2017/2/28 05:00)
米映画の祭典・第89回アカデミー賞作品賞に、黒人少年の成長記『ムーンライト』が決まった。一度は本命視されたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』と発表し、直後にミスと訂正する異例の事態。
昨年は主要俳優部門を白人が独占していると物議を醸した。今年は多様な人種、テーマの作品が受賞。『ラ・ラ・ランド』は6部門を制してお祭り気分を高めたが、晴れの舞台の大詰めで後味の悪い思いを残した。
映画は世相を反映する。1970年前後はベトナム戦争への厭戦(えんせん)感から、体制に反逆する「アメリカンニューシネマ」と呼ばれる作品が多く出た。かつてはヒット作が受賞を競ったが、最近は受賞が知名度と直結しない。『タイタニック』『フォレスト・ガンプ/一期一会』といった、誰もが知る名作が懐かしい。
今年はメッセージ色の濃い作品を選んだのが特徴だろう。外国語映画賞を受賞したイラン人監督は、トランプ大統領の入国禁止令に反発して式典出席をボイコット。『ムーンライト』の“逆転受賞”も、人種差別への反感が作用したという見方がある。ファンは何より、話題の作品に共感したいと考えて映画館に足を運ぶ。政治情勢で受賞結果が揺れたのだとしたら残念に思える。
(2017/2/28 05:00)