[ オピニオン ]
(2017/3/24 05:00)
同じ地域で生産活動に従事する中小製造業と農業が連携すれば、新たな可能性が生まれる。
大企業の海外生産が進み、部品加工を受注生産していた中小製造業の数は減少が続いて厳しい状況に直面している。一方、農業も高齢化、後継ぎがいないといった悩みを抱えて先行き不透明感が漂う。
これまで接触のなかったマイナス局面の両者をかけ合わせ、プラスに転じさせようという動きが出てきた。地域の中小製造業の技術を活用したスマート農業の試みだ。スマート農業とは機械や情報通信技術(ICT)を活用して省力化・高品質生産を実現すること。大掛かりな機械ではなく、中小製造業が使っているロボットやセンサーなどの技術を農業に応用する。
機械振興協会経済研究所は、これまで中小製造業の航空機や介護・福祉機器、医療機器分野への参入の調査、支援などを実施してきた。農業分野では農工連携を目指した研究会を立ち上げ、新たに「中小製造業のスマート農業への参入状況と今後の課題」を調査した。
アンケートに応じた269社のうち24%がスマート農業に取り組むか計画している。参入理由は「脱下請け」が41%、次いで「当該分野の国内市場の拡大に期待」が35%だった。狙っている分野は「野菜」や「果物」「水稲」が多かった。
同研究所の北嶋守次長は「中小企業と農業は地域経済を支えている点で同じ場所にいる。またスマート農業では、作物は大量でなくともいいが、タイムリーにほしいという要望に応じないといけない。これは中小企業の多品種少量生産の仕組みと似ており、発想のマッチングができる」という。
農工連携のビジネスモデルを確立し、若い人たちがきつい農作業にも夢を持って取り組めるような産業にしていくことが望まれる。それは地域の飲食店や商業、観光などの活性化にも寄与するだろう。そして中小製造業も成長できるようになる、地域の皆がウィン―ウィンの関係になることが真のスマート農業の姿ではないだろうか。
(2017/3/24 05:00)