[ オピニオン ]
(2017/4/14 05:00)
2度にわたり最大震度7を記録した熊本地震から1年。家屋や公共施設などの被害は甚大で、熊本県の試算では被害総額は3兆7850億円に上る。ただ、蒲島郁夫県知事が掲げる、単に震災前の姿に戻すのではなく、より良い状態を目指す「創造的復興」の姿も徐々に見えてきた。
熊本県内には自動車や半導体などの大手企業も立地し、建屋や設備の被害額は8200億円と試算される。しかし復旧スピードは速く、新たな設備投資に踏み切る企業や、本社機能を他地域から熊本に移すところも出てきた。
県は震災の半年後に当たる2016年10月と11月に、東京と名古屋で企業立地セミナーを開いた。多くの県民が避難所や仮設住宅での生活を強いられている中で、震災から立ち直る企業の姿を発信する好機となった。
県が12月に策定した「熊本復旧・復興4カ年戦略」では、成長産業を対象にした企業誘致のほか新産業育成を掲げる。その一環で、熊本大学や肥後銀行、県工業連合会などと「次世代ベンチャーの発掘・育成に向けた連携協定」を結んだ。背景には「地震をコストではなく、経済成長の原動力に」という蒲島知事の強い思いがある。
「世界とつながる新たな熊本の創造」にも取り組む。震源からほど近い阿蘇くまもと空港(益城町)を創造的復興のシンボルと位置付け、周辺を含めたグランドデザインを策定した。阿蘇山の玄関口に立地するメリットを生かし、観光産業はもちろん、新たな産業やサービスの拠点に育成する。
県の重要港湾、八代港(八代市)の活性化にも着手した。世界2位のクルーズ船社と連携、国際クルーズ拠点として整備し、外国人旅行者を呼び込む。
熊本県のマスコット「くまモン」は年間1000億円を稼ぎ出し、今も復興の象徴として全国各地をめぐっている。震災をバネにして経済成長を果たすのは容易ではないが、「逆境の中にこそ夢がある」という蒲島知事の言葉を現実のものとしてほしい。
(2017/4/14 05:00)