[ オピニオン ]
(2017/4/27 05:00)
原子力発電所は安全性ばかりでなく、コスト面でも是非を議論しなければならない時代になっている。
東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故以降、安全規制の強化などで建設コストが上昇している。詳細は不明ながら、フィンランドでは建設費が予定の3倍になり、1兆円を超したとも報じられている。
こうした建設費の高騰にも増して懸念されるのは、使用済み核燃料の処理処分と規制強化によるコストだ。
高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉が決まった。使用済み核燃料を再処理したウランとプルトニウムを燃料にし、消費した以上の燃料を生み出す“夢の原子炉”といわれたが、事故が相次ぎ、1兆円超の事業費をつぎ込みながら、わずかしか運転できない“悪夢”で終わった。
青森県六ケ所村の再処理工場の存続も困難を抱えている。工場は完成の延期を繰り返し、建設費は予定の3倍近い2兆円超に膨らんだ。仮に完成しても、行き場のないプルトニウムを余剰に保管することは国際社会が許さない。結局、使用済み燃料は直接処分しかないようだ。だが、その処分場の選定も当初計画から大幅に遅れている。
電力会社が既存原発を再稼働したいと考えるのは当然だ。しかし将来を見通すとコストが重荷になる。廃棄物を何万年も管理するコストは、まだ試算できていない。電気料金にせよ税金にせよ、最終的には国民負担が避けられない。
今後の原発規制の強化にも備えが必要だ。追加投資で東日本大震災後の新基準に適合させた電力各社は、将来の廃炉までは採算の範囲内に収まると見積もっているのかもしれない。
だが東電の廃炉作業の進展によって事故原因の究明が進めば、新たな規制強化もあり得る。原発の新基準は既設原発にも適用されるバックフィット制度であり、基準改定のたびに再度審査を受けることになる。
それでも採算は大丈夫か。将来の追加支出の採算ラインについても、何らかのシミュレーションをしておくべきであろう。
(2017/4/27 05:00)