[ オピニオン ]
(2017/6/28 05:00)
経済産業省は大手コンビニエンスストア5社と共同で、2025年までに全取扱商品(推計年1000億個)にICタグ(電子荷札)を貼り付け、個品管理する「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を行った。流通の効率化のため、かけ声倒れに終わらせてはならない。
宣言したのは、セブン―イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、JR東日本リテールネット(店名はニューデイズ)。18年をめどに、5社は特定地域で取扱商品にICタグを貼り付け、実証実験を始めるという。
産業界の人手不足は深刻度を増し、物流業界はもとより、小売業にも影響が出ている。特にコンビニ店舗でのレジ業務は複雑化しており、アルバイトには手に余るケースも出ている。
これに対し、ICタグはバーコードのように読み取る必要はなく、瞬時に数量を把握し、代金を算出する。レジ作業が大幅に軽減され、店舗の人員配置を見直せるほか、買い物客にとってもレジ待ち時間を減らせるなどのメリットがある。
米アマゾン・ドット・コムは人工知能(AI)や顔認証システムを活用した決済不要の無人レジのコンビニを開発した。客と店舗の双方にとって煩わしいレジ業務を見直す動きは、今後も広がるだろう。
ICタグの利点はレジ業務の効率化に限らない。商品がどの時点で、どこにどれだけの量があるのか、容易に把握できるようになる点である。この情報を流通網で共有すれば、メーカーは過剰生産を抑制でき、小売りや卸の在庫も最小化できる。欠品が起きても商品確保のめどが立てられるので、販売機会を逃す懸念は小さくなる。
課題はICタグ1枚で数十円のコストがかかる点だ。安価な商品に貼付するにはハードルが高く、経産省は1枚1円以下への引き下げを目標にしている。
大手コンビニが積極採用に踏み切れば、量産効果によりコストダウンが進む。同一規格のICタグを使うことで、大手流通チェーンの枠を超えた効果も期待できよう。
(2017/6/28 05:00)