[ オピニオン ]
(2017/6/29 05:00)
今年は改正高齢者雇用安定法の施行から5年目。多くの企業が対応策を講じたものの、高齢者人材を十分に活用できているとは言いがたい。
2013年4月に施行された改正法では、従業員の雇用年齢を段階的に引き上げ、25年には65歳までの希望者の雇用を義務付けるとしている。厚生年金の受給開始年齢引き上げに伴う救済措置の側面もあるが、人口減少の中で、高齢者を新たな労働力として位置付けることは間違っていない。
16年平均の有効求人倍率が1・36と、25年ぶりの高水準を示すなど、日本経済は求人難に見舞われている。産業界でも特に中小企業の経営者から、今後の人材確保に向けて不安の声が聞かれる。一方で60歳を超えた従業員の雇用は、年収を大幅に抑える再雇用が一般的。高齢者のやる気を引き出す仕組みは意識されていない。
先ごろ愛知県経営者協会が「長期雇用時代におけるキャリア開発」と題する報告書をまとめた。「若年層から高齢者まで全ての世代が力を発揮できる仕組みの構築」と副題を付け、特に総合職に関して現状の問題点と解決策を示している。
それによると、高年齢期の労働意欲低下の原因はいくつかある。高齢者は一般に企業内で自らの役割の変化を理解できておらず、新たなキャリアへの経験や準備、組織としての支援も不足している。
この解決策として、企業は早い時期から計画的に準備する必要がある。多様なキャリア選択ができる仕組みを構築し、自律的に学び続ける社員を育てるべきだと促している。ただ個々の職場で事情は異なる。専門担当者や検討チームを置ける大企業はまだしも、もともと人材が足りない中小企業にとっては簡単ではなかろう。
高齢労働者の増加は今後、加速する。成功事例を集め、それを分析することを含めて、より議論が深まることを期待したい。高齢者雇用を年金支給までの対応と見なさず、経済効果を含めた社会全体の大きなテーマとしてとらえるべきだ。
(2017/6/29 05:00)