[ オピニオン ]
(2017/7/31 05:00)
埼玉県蕨(わらび)市で8月4―7日に、第67回の「機(はた)まつり」が開かれる。旧暦の七夕に加えて特産の「双子織(ふたこおり)」をテコにした街おこしが特徴だ。
東京のベッドタウンのイメージが強いが、かつては江戸向けの織物の一大産地。幕末に英国から輸入した2本撚(よ)りの綿糸から生まれたのが双子織だ。素朴な手触りと鮮やかな縞(しま)模様で人気を博したが、その後の量産綿布に押されて衰退した。
埼玉織物工業協同組合の『70年史』からは、第二次大戦後の業界の盛衰が読み取れる。織機をガチャンと動かせば万単位でもうかった“ガチャマン景気”はすぐ終わり、日米繊維交渉やアジア勢の台頭で県南部に100社以上あった繊維会社は激減。社名を残しつつ貸しビルオーナーになった組合員も少なくない。
発刊したばかりの70年史は伝統の紺系の双子織で装丁した。理事長の飯塚司さんは「何らかの形で業界の復活を」と仲間に呼び掛け、伝承施設などの構想を抱く。
現代の双子織は財布やポーチ、ネクタイなどに使われる。また蕨商工会議所は、新開発の焼き菓子のパッケージに双子織を採用する計画。かつて神前に御衣を奉納して技能上達を願った織子さんのように、「機まつり」で地域資源の復活を天に祈る。
(2017/7/31 05:00)