[ オピニオン ]
(2017/9/1 05:00)
介護現場にコミュニケーションロボットを活用する動きが本格化している。実証試験を通じ、介護現場への導入に弾みが付くとともに、メーカー各社には現場のニーズを生かした機器開発を求めたい。
日本医療研究開発機構は2016年度事業として「介護分野におけるコミュニケーションロボットの活用に関する大規模実証試験」を実施した。全国96施設で実施した結果、被介護者866人のうち、296人(34・2%)に運動・移動や社会生活といった活動項目で改善効果が認められた。
ロボットが会話し、活動や行動を促すことで被介護者の生活が活発化する。自立度が向上するだけでなく、状態の悪化予防にも寄与した。
試験に参加した4社会福祉法人の連合体「西東京コンソーシアム」は、3種類計110台のロボットを使った。これまで「全介助」だった患者の状態が「一部介助」になり、単独歩行では転んでいた状態の被介護者が転ばなくなるなどの改善例が見られたという。
プロジェクトに関わったユニバーサルアクセシビリティ評価機構(東京都新宿区)の尾林和子代表理事は「コミュニケーションが活性化され、自分で自分のことをやろうというセルフケアの意識が高まった」と指摘する。
介護現場には課題が多い。特に少子高齢化に伴う担い手不足は深刻だ。厚生労働省によると、団塊世代が後期高齢者となる2025年の介護人材の需要見込みは約253万人に対し、供給見込みは約215万人。約38万人の需給ギャップが発生すると試算する。
呼びかけやレクリエーションといった介護者の業務を、ロボットがその一部を代替したり、補助したりすれば、介助者の負担軽減につながる。だがこうした有用性が指摘されながらも、具体的な効果を明らかにする研究は乏しかった。
要介護者の活動に明らかな改善効果が得られた点は大きい。課題解決に向けたロボットの可能性に期待したい。
(2017/9/1 05:00)