[ オピニオン ]
(2017/9/6 05:00)
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を基準に投資先を選ぶ「ESG投資」が広がっている。大手企業は投資を呼び込もうと情報開示に熱心だ。上場する中堅企業も情報を発信し、長期視点で成長を応援してくれる投資家を獲得してほしい。
環境省は「ESG対話プラットフォーム」を開設する。企業がウェブサイトに「ESG情報」を登録し、投資家が内容を確認して企業に質問を出せる。2016年度はパナソニックやトヨタ自動車など255社が情報を開示した。ただ、その顔ぶれをみると大企業ばかりだ。
ESG投資は上場2000社が対象となる。同省は参加を増やそうと、17年度は簡単な情報でも登録できる仕組みを用意。関心はあっても投資家との対話にためらう企業に、開示を体験できるようにした。
開示内容は気候変動問題への対応(環境)、自社や取引先従業員の人権への配慮(社会)、社外取締役の人選(企業統治)など多岐にわたる。投資家は、将来の環境規制に対応しているか、社内の風通しが良いか、不正を犯す恐れがないか評価できる。本業の強みを生かして社会課題を解決し、持続的に成長するかどうかも見極められる。
国際的な調査団体の世界責任投資ネットワークによると、16年の世界のESG投資残高は22兆ドル(約2472兆円)。ほとんどを欧米が占め、日本は3%の4740億ドルに留まる。
それでも14年の67倍に急増した。約140兆円を運用する世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立法人(GPIF)がESG重視を表明したからである。
日本のESG投資は始まったばかりで、投資家も手探りで情報を吟味している段階だ。中堅企業の開示が増えれば、投資家の眼力も養われるだろう。
企業にとっては、短期的な業績に左右されず、将来の成長に備えた技術開発に打ち込めるメリットがある。自社の将来性を売り込む機会と捉え、積極的に取り組んでほしい。
(2017/9/6 05:00)
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