[ オピニオン ]
(2017/10/24 05:00)
長きにわたった混乱で、東芝に対する内外の信頼は大きく傷ついた。経営危機からの脱却を確実にし、社会インフラ事業を中心とする本業の立て直しを急いでもらいたい。
東芝は24日の臨時株主総会で、半導体メモリー事業の売却や、2017年3月期決算の承認を株主に求める。半導体子会社「東芝メモリ」を米ベインキャピタルが主導する「日米韓連合」に売却することを決めており、東芝も引き続き、議決権比率で40%程度を保有する。
経営への参画を求めていた米ウエスタンデジタルとの係争はまだくすぶっているが、メモリー事業の売却によって東芝は債務超過を免れ、上場を維持する。経営危機の脱却に向けた大きな一歩である。
しかし、これで東芝が立ち直ったとはとても言えない。経営危機が続く間に少なからぬ従業員が東芝を去り、また取引先との間で築いてきた長年の信用も揺らいでいる。要件の厳しい官公庁からの受注にも影響があった。信頼回復には、相当な時間がかかるだろう。
だが東芝のような総合的な技術力を持ち、社会インフラ事業を手がける企業体が、日本の産業界にとって貴重であることに変わりはない。官民の多くが、内需・外需の両面で日本経済を発展させていく上で欠かせぬ存在だと考えている。
再び不正会計のような問題を起こさぬための内部管理体制の改善も進んでいるという。経営陣がきょうの株主総会で信任され、着実な経営再建が進むことを期待する。
やむを得ず売却するメモリー事業についても、引き続き相応の責任を果たしてもらいたい。日本の半導体産業はかつて世界市場の過半を占めた。その後、韓国などの追撃で多くを失ったが、東芝のフラッシュメモリーは数少ない勝ち残り組だ。海外のライバルとの競争に打ち勝つためにも、出資者の了解を得つつ、適時適切な投資を継続する必要があろう。
東芝が再び、日本の産業界のリーダーとして戻ってきてくれることを期待する。
(2017/10/24 05:00)