[ ICT ]
(2017/12/1 05:00)
「IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)技術を生かすためにも、これらを支えるITインフラ技術者の育成を急ぐ必要がある」――。この分野のキーパーソンから、こんな訴えを聞いた。対処に向けた活動も始まっている。今回はこうした動きを追ってみた。
AITAC理事長の村井純慶大教授が訴え
そのキーパーソンとは、慶應義塾大学環境情報学部長兼教授の村井純氏である。同氏曰く、「これから活用が広がるIoTやAI技術では、とてつもないビッグデータを扱うことになる。その研究開発もさることながら、それらを支えるITインフラの構築・運用は大丈夫なのか。ましてや、ネットワークをはじめとしたITインフラ自体にも新たな技術が求められている中で、IoTやAIを生かすためにもITインフラ技術者の育成を急ぐ必要がある」。冒頭のコメントは、この発言のエッセンスである。
村井氏のこの発言は、「高度ITアーキテクト育成協議会」(AITAC:Advanced IT Architect Human Resource Development Council)と呼ぶ総務省のワーキングループを母体とした一般社団法人が先頃開いた事業説明会での一幕である。同氏はAITACの理事長も務めており、発言内容もその立場によるものである。
AITACは、NTTコミュニケーションズ、伊藤忠テクノソリューションズ、NEC、KDDI、シスコシステムズ、日商エレクトロニクスの6社によって、IoTやAI時代に求められる高度なITアーキテクトの育成を目的として今年7月に設立された。
高度ITアーキテクトとは「ソフトウェアによるITインフラ活用スキルを有する人材」の意味だという。総務省のワーキンググループで検討されてきたテーマを具体的な活動に移そうということで、AITACが設立された格好だ。
具体的な活動内容としては、国内外の社会人や学生を対象に、SDN(Software Defined Network)およびNFV(Network Function Virtualization)などのソフトウェアを最大限活用したインフラ構築技術・スキル習得のための体系的な育成カリキュラムの策定・提供を行うとともに、産学と連携した教育訓練の場の整備、ならびにSDN/NFVなどの情報通信技術に関する資格認定制度の整備を行っていくという。
これらを通して、ネットワークとコンピューティング両方のスキル、仮想化や外部クラウドなどのソフトウェア資源を活用できるスキルを所有し、ITインフラを構築・運用できる人材を育成することを目指すとしている。
東京・大手町に研修施設オープン
AITACは先頃、慶応大学SFC研究所、慶応大学大学院政策・メディア研究科サイバーセキュリティコース、およびパソナグループとの連携・協力のもとに、東京・大手町の日本ビル内に研修施設となる「サイバー大手町(Cyber Otemachi)」を開設。このお披露目とともに事業説明会を開いた。
村井氏は、「この研修施設を大いに利用し、IoTやAI技術の活用を支えるITインフラの構築・運用を任せられる高度ITアーキテクトの育成を目指したい」と強調した。IoTやAIもさることながら、それらを支えるITインフラ技術者の育成も急ぐべき、という同氏の訴えを本コラムでも前面に出して取り上げておきたい。
(隔週金曜日に掲載)
【著者プロフィール】
松岡 功(まつおか・いさお)
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年生まれ、大阪府出身。
(2017/12/1 05:00)