[ オピニオン ]
(2018/2/2 05:00)
マウスとアイコンを使った画像操作環境(GUI)、代表的なLANであるイーサネット、ウインドーシステム…。今の情報通信機器に欠かせない技術は、1970年代半ばに米カリフォルニア州のゼロックス・パロアルト研究所で誕生していた。
ところが当時のゼロックス上層部は、これら画期的な技術成果をまったく理解できなかった。その後のIT業界をリードする大きなチャンスがあったにもかかわらず、事実上、事業化を見送った。
この研究所を見学した米アップル創業者のスティーブ・ジョブズは、これらの技術を搭載した試作機に興奮した。これをまねて「マッキントッシュ」を商品化し、パソコンが一般に認知されるキッカケを創った。
コンピューター業界関係者の間では、この逸話はあまりにも有名である。全米から最高の頭脳を集め、自由な研究環境を与え、数多くの発明を生み出した。だがレーザープリンター技術以外は、ほとんど利益に結びつけられなかった。
そのゼロックスを、富士フイルムホールディングスが買収する。写真フィルムの衰退をいち早く察知し、高機能材料や医薬・医療機器関連に軸足を移すことに成功した経営陣だけに、同じ轍(てつ)を踏むことはあるまい。
(2018/2/2 05:00)