[ オピニオン ]
(2018/2/15 05:00)
2008年10月に発足し、今秋で満10年を迎える日本政策金融公庫。前身は国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫だが、融資件数では国民公庫が、額では中小公庫が多く、農林公庫は地味な存在。
ところが最近「驚くほど農業向けが伸びている」と、元財務次官で昨年末、総裁に就任した田中和穂さん。同公庫が力を入れている民間金融機関との協調融資では、17年4―9月期の農林漁業分野が額・件数とも前期比60%超の伸びを記録した。
主たる融資案件は設備投資だが、農業分野の8割は個人農家ではなく法人相手。それも食品工業などではなく、大規模な畜産業が多い。「農業の6次産業化は着実に進んでいる」と感じたそうだ。
優良中小企業への融資をめぐっては、地方銀行などとの衝突を批判されることがある。農業分野にはそうしたあつれきもなく、当面の成長が見込めるという。
中小企業相手の取引にも変化が生じている。今国会では、従来よりかなり有利な内容の事業承継税制を審議中。成立すれば後継者に悩む経営者が決断する局面も増えそうだ。「周知に務め、中小企業の良き相談相手になりたい」と田中さん。民業圧迫に気をつけながら、活躍してもらいたい。
(2018/2/15 05:00)