[ オピニオン ]
(2018/6/8 05:00)
「48億の個人的な憂鬱 地球がその重みに耐えかねてきしんでる」―。ザ・ブルーハーツの『ハンマー』。簡潔で力強い言葉で、高い社会性を感じさせるパンクロックの名曲だ。毎年暑い時期が近づくと、この曲を思い出してしまう。
体の不自由な人や老人、重い荷物を遠くまで運ぶ人。世界中でどれほど多くの人が自動車の恩恵を受けていることか。少し頑張ってお金を出せば、誰でもその恩恵を得られる現代人はなんとも恵まれている。
だが夏場、涼しい車内からいったん外に出ると、身の回りを包むような熱気が、ラジエーターや排気口から押し寄せてくる。地球も温暖化するわけだ、と素朴ながら感じる瞬間だ。
ハンマーのシングル盤が発売されたのは1987年。ブルーハーツがメジャーデビューする前のインディーズ盤だった。その時から世界人口は増え続け、いまや70億人を超えてしまった。
70億人が“個人的な憂鬱”を解消する手段として自動車を使う。どこでも移動できる自動車は、個人個人の自由な幸福追求の一つの象徴かもしれない。だが、そこで発生する大量の廃熱に、地球は耐えかねるのではないか。ではどうすればいいのかはわからずに、ハンマーを口ずさんでいる。
(2018/6/8 05:00)