[ オピニオン ]
(2018/9/14 05:00)
石油元売り業界が好業績に沸いている。主要大手の2018年4―6月期(一部1―6月期)連結決算は、原油価格の上昇と国内市況改善により各社とも2ケタ増収で、各利益を数倍に伸ばした。ただ、石油製品の国内市場は縮小の一途をたどっている。資金的な余裕のある今こそ、事業構造を転換するチャンスだ。この機会を逃さずに、改革を推し進めたい。
石油業界を取り巻く事業環境は大きく変化した。元売り各社が主力とする国内の燃料油需要は00年以降、減り続けている。自動車市場の成熟に加え、省燃費のハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)をはじめとするエコカーが普及し、人口減少社会を迎えてさらに右肩下がりの傾向が目立っている。
元売り各社のブランドを掲げてガソリンや軽油を販売する給油所数は1994年のピーク時に比べ半減し、約3万1000店。ここ数年は年率2―3%の販売数量減が続き、ある大手首脳は「40年には燃料油の内需が半減する」と先行きを読む。
こうした状況から政府は2009年にエネルギー供給構造高度化法を施行し、設備過剰となった製油所の合理化と業界再編を促した。17年4月に旧JXホールディングス(HD)と旧東燃ゼネラル石油が統合し、国内燃料油販売で過半のシェアを握るJXTGHDが誕生。高度化法に基づく精製能力削減と相まって、過当競争が是正された。
需要が膨らむアジア新興国などへ展開するためにも、統合による事業基盤の強化は急務。創業家の反対で難航していた出光興産と昭和シェル石油の経営統合も19年4月に実現する見通しとなり、上位2社で国内燃料油市場の8割以上のシェアを占めるようになる。業界では「かつてのような過当競争(安売り)が再燃し、マージンが大きく崩れる状況は想像しにくい」という見方が大勢だ。
当分の間、需要増が見込まれる海外市場の拡大や脱炭素社会を見据えた再生可能エネルギー事業への展開など、各社が描く成長戦略で思う存分、競い合おう。
(2018/9/14 05:00)