[ オピニオン ]
(2018/11/27 05:00)
日本のモノづくりの安全神話が崩壊したと耳にするようになって久しい。製造業では業種を問わず、データ改ざんの問題が相次いで発覚している。企業は効率性を求めながらも安全性をいかに保つか―という古くて新しい課題に向き合っている。
11月中旬、東京都足立区にある日立製作所グループの「人財開発センター」。静寂を突き破るかのように、作業員の点呼の声が、こだまする。エレベーターやエスカレーターのメンテナンスなどの技能を競う大会の一幕だ。
1992年に始まり、16回目を迎えたが、今年から大会の中身が大きく変わった。これまで、エンジニアの技術や接客などを競う大会と安全技能の大会を別々に開催してきたが、今年から一本化された。
宝珠山泰博センター長は「安全を意識した上で作業時間など効率をいかに求めるか。より現実に即した形にした」と語る。競技内容も全国で最近よく見られる故障などの傾向を取り入れるなど、「現場感」を重視する。
エレベーターやビル設備の保全は人命にかかわるだけに安全が最重視される世界だ。安全を徹底した上で、効率を求めてきた歴史ともいえる。安全か、効率かの二者択一の思考から脱するヒントがそこにはあった。
(2018/11/27 05:00)