[ オピニオン ]
(2019/1/15 05:00)
経済産業省と国土交通省は、操縦士なしで空を移動できる電動航空機「空飛ぶクルマ」について、実用化の目標時期を2023年とするロードマップ(工程表)を策定した。先行する欧米勢と伍(ご)して戦おうとする野心的な目標だ。大型航空機への転用も可能であり、産業化に期待がかかる。政府は機体メーカーなど民間側の意見を丁寧に反映させ、推進してもらいたい。
空飛ぶクルマは、垂直離着陸を行い、時速100キロ―200キロメートル前後で高度150メートル前後の空域を飛行する。渋滞が激しい都市部や交通が不便な中山間地域などに用いる。海外では米ウーバー・テクノロジーズや欧エアバスが23年の実用化を目指すなど、開発競争が激化している。日本政府は、モーターなど日本の技術力を生かせるほか、大型航空機の電動化など産業の裾野も広いことから、産業化を後押ししている。
工程表の目標では、試験飛行・実証実験の時期を19年、実用化の時期を23年に設定した。今後、事業の開始に間に合うよう、型式証明や耐空証明、離着陸場の整備など制度・体制面を整える。また自動飛行の運航管理技術や静粛性など電動技術の開発を推進し、空の交通ルールも検討していく方針だ。
特に重要なのは安全基準だ。墜落するリスクがあるだけに、航空機と同じ安全性が求められる。日本の独自基準にならないよう、欧米が策定する国際基準と調和させる作業も重要だ。また空という公共空間を使うだけに、空飛ぶクルマの必要性を国民に訴え、広く合意形成を図る必要がある。
一方で、過度に規制で縛り付けたり、環境整備の速度が緩慢だったりすると、事業化を目指す企業の動きを停滞させ、産業化の面で欧米に後れをとる恐れがある。すでに民間側からは「米連邦航空局(FAA)と足並みをそろえて早く取り組んでほしい」や「産業界としては(物資輸送ではなく)旅客で勝負したい」といった声が出ている。民間側の要望に寄り添いつつ、官民一体で機運を盛り上げてほしい。
(2019/1/15 05:00)
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