[ オピニオン ]
(2019/3/25 05:00)
立山連峰が白いきらめきを放つ富山県の春。4月になれば白光の源が巨大な壁となってそびえる「雪の大谷」が目前で楽しめるようになる。その壮観を堪能しようとする人々が国内外から集まり、地域経済を潤す。
県のシンボルである立山は8世紀初頭に開山したと言われる。それにまつわる地元の言い伝えが「白鷹伝説」だ。越中国司の息子だった佐伯有頼が、逃げ出した白鷹を追い、山中で阿弥陀如来に会う。僧になって山を開くよう命じられた有頼は、出家して慈興と号し、開山に尽くしたとされる。北陸新幹線の列車「はくたか」の愛称は、この伝説にちなむ。
その北陸新幹線が開業から5年目に入った。4年目の利用者は869万4000人で、1年目に次ぐ2番目の多さだった。在来線特急の時代に比べ、3倍ほどに増えた。
恩恵は地域のすみずみにまで浸透する。富山県には、開業後に本社機能を県内に移す企業があらわれ、金沢市では、観光客の需要を見込んだホテルの新設が相次ぐ。
北陸新幹線は2023年春に福井県敦賀市まで延伸する予定で、今後も地域経済の進路を大きく左右しそうだ。古代に立山を開いた白鷹は、時空を超えて、現代の北陸に新たな地平を開いている。
(2019/3/25 05:00)