[ オピニオン ]
(2019/7/22 05:00)
博士人材育成の文部科学省「卓越大学院プログラム」で、多様な取り組みが広がっている。外部からの資金獲得が必須だが、設計の自由度を高めたことが功を奏した。現場に甘くない支援事業を、大学の力に生かす設計ができるかどうか。それが問われる時代になっている。
卓越大学院は、社会のあらゆる分野で活躍する、独創的で俯瞰(ふかん)力を持つ博士号取得者を育てる5年一貫のプログラムだ。初年度の2018年度には13大学15件が採択された。補助金額が次第に減り、最終年度は初年度の3分の1となる。その分を企業などから、研究や産学連携と結びつけて獲得する力が求められる。しかし、19年度の本格スタートに伴い、その中身の幅広さが明らかになってきた。
例えば、早稲田大学は電力・エネルギー分野で、計13の国公私立大学の学生を対象とし、各大学とつながる全10電力会社と連携した“教育拠点”を構築する。筑波大学は受講生が、生命医科学系と理・工・情報学系の2教員から“完全ダブルメンター”で指導を受け、産学などの共同研究の主体者となる。
企業資金獲得で多いのは、有料の会員制組織との連動だ。一方で、博士課程学生ならではの力を生かした取り組みもある。東京工業大学は受講生と教員が数週間、企業に常駐して課題解決にあたる。データ分析や異なる専門を掛け合わせる高度な案件で、企業から対価を得られる。
同事業は「国の資金獲得という点ではうまみが少ない」(採択大学の幹部教員)ことが、応募を絞るよう働いた。国の資金を学生の経済支援に回す計画しか立てられない大学など、従来の博士教育事業と異なり除かれたとみられる。
また、同事業は他事業と比べ、細かな条件が設定されなかった。“公募要領に合わせて提案を作文する”のに慣れた大学には、戸惑いがあった。それだけにユニークで熱意ある事業が選ばれ、進むことになった。公的資金は単なる補助ではなく、組織全体を大きく変える事業に投入されるものだと実感される。
(2019/7/22 05:00)
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