[ オピニオン ]
(2019/7/26 05:00)
個人から預かったデータの利活用を目的とする「情報銀行」に2社が名乗りを上げた。着実な一歩を踏み出したといえるが、政府肝入りの新制度のわりには注目度がいま一つ。情報銀行の意義を世の中に知らしめる意味でも、普及促進へのカンフル剤が必要だ。
情報銀行は、利用者(消費者)から購買履歴や健康情報などの個人データを一括で預かり、本人同意の上で企業に提供する仕組み。本人の同意を得た上で、データを流通させるプラットフォームは世界的にも類がなく、企業や分野を越えたデータ流通基盤としての期待は大きい。
利用者は、データ提供の対価として信用力や金銭、ポイントなどが得られる。企業ユーザーは情報銀行から入手した個人データをマーケティングや製品開発などに活用できる。
認定第1弾は、三井住友信託銀行の「データ信託」サービス(仮称)と、フェリカポケットマーケティングの「地域振興プラットフォーム(仮称)」。いずれも安心・安全の“お墨付き”を得て、利用者にアピールすることが可能だ。
しかし、第1弾のサービス内容をみると、目新しさが感じられない。情報銀行認定は法的な資格を伴う許認可業務ではなく、認定自体がサービス提供の決定的な差別化にはならず、安心・安全の価値も利用者の意識で左右されるのが現実だ。
業界内では、「重要な情報を持っている会社は同意に基づいてデータを流通させるよりは、データを囲い込んで利活用した方が得策」との指摘もある。先行きを判断するのは時期尚早だが、情報銀行の実証実験が相次ぐ一方で、世間の関心は薄い。
情報銀行は、利用者が自らの個人データを安心・安全にコントロールできる新しい仕組みであり、「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる巨大プラットフォーマーへの対抗軸としても注目。それにはGAFAはもとより、膨大なデータを持っている既存のサービス業者との力比べに伍していかねばならない。市場を盛り上げる施策が必要なのではないか。
(2019/7/26 05:00)
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